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都心の中古マンション価格、新築時の3倍に 六本木など

東京都心のマンション群。奥は東京スカイツリー
都心の中古マンションの価格上昇の勢いが止まらない。新築時と比べて3倍を超えた値段で売買される事例が出てきた。大阪でも2倍を超える。世界の主要都市と比べて割安感があることなどから外国人投資家からの引き合いが依然強く、都市部で進む再開発エリア周辺に建つ物件で上昇が目立つ。

不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)が首都圏や関西地区などを対象に築10年程度の中古マンションの平均希望売り出し価格を駅ごとに調べて、新築時の販売価格と比較した。
6月末時点で東京メトロの六本木一丁目駅(港区)周辺の物件は3.69倍、東池袋駅(豊島区)が3.04倍、新御茶ノ水駅(千代田区)は3.03倍と、3エリアで3倍を超えた。3倍を超えたのは調査を開始した2003年以降で初めて。

六本木一丁目駅周辺では、14年に竣工した「グランスイート麻布台ヒルトップタワー」が現在、2億6831万円。分譲時の平均価格は1億267万円だった。マンション向かいに商業施設「麻布台ヒルズ」が開業し、利便性が一段と向上して資産価値が高まった。
東池袋で上昇が目立ったのが15年竣工の「ブリリアタワー池袋」。分譲時の平均価格は7917万円だったが、現在は3億8702万円に跳ね上がった。東京メトロ東池袋駅から地下通路直結と利便性が高い。池袋駅周辺では再開発事業が進められ、幹線道路の整備も計画されている。人や物が集まりやすいまちづくりによって価格上昇に弾みがついた。
価値の上昇が目立つマンションは、多くが13年に始まった日銀の「異次元緩和」前後に建設された物件だ。当時は東日本大震災の影響もあって地価が低迷していた。緩和政策によって不動産市場にマネーが流れ込み、好立地を狙ってデベロッパーが続々とマンションを建てた。
外国人向けに都心のマンションなどを仲介・販売する不動産会社ハウジング・ジャパン(東京・港)では24年に入って、昨年と比べて2〜3割取引が増えている。橋本光央代表取締役は「世界的にも割安で治安もよく、地政学的リスクが低いため所有しようと考えるアジア圏の顧客が多い」と指摘する。
23年以降は円安傾向も価格上昇の背中を押した。もともと香港やニューヨーク、ロンドンなどと比べて日本のマンションは安かったが、24年に入って一時1ドル=160円まで進んだ円安によって一段と海外の投資家が関心を示すようになった。足元では1ドル=145円前後まで戻ってきたが、年初来ではなお円安水準にある。日本国内の実需層に加え、海外マネーも都心のマンションへ向かい価格が高騰した。

「100年に1度」ともいわれる再開発が進行している大阪・梅田周辺の中古マンションの価格も上がっている。JR大阪駅(大阪市)周辺の物件は新築時の2.4倍になった。13年に竣工した「グランフロント大阪オーナーズタワー」は現在、2億294万円。分譲時の平均価格は7470万円と3倍近く価格は上昇している。インバウンド(訪日外国人客)を当て込んだホテル投資も活発で、駅近のマンション価格を押し上げている。
不動産仲介会社、FJリアルティ(東京・中央)の藤田祥吾社長は「市場は活況で投資家は良い物件があったらすぐ買いたいとの声が多く、物件を買ったらすぐ売る転売も多い」と話す。需要は旺盛で「好立地の中古マンションの価格上昇は続きそうだ」と指摘する。


(提供:2024年8月10日 日本経済新聞)


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