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行き過ぎた節税にメスで、直前購入は節税の主戦場ではなくなる。2026年は相続・贈与需要の駆け込み急増か!?

2025年12月に自由民主党と日本維新の会が取りまとめた「令和8年度税制改正大綱」では、相続・贈与の直前(5年以内)に取得もしくは新築した一定の貸付用不動産に対して通常の取引価額(市場価格)に相当する金額で評価することが盛り込まれた。

「不動産は一律に路線価評価をやめて時価へ」という全面変更ではなく、課税上の弊害がなければ、取得価額を基に地価変動等を織り込んだ価額×80%で評価できる考え方も示され、実務では「0.8」の扱いが重要論点になっている。

対象は貸付用不動産だけでなく、不動産小口化商品(不特法や一定の信託受益権スキーム等)にも及び、こちらは取得時期を問わず「通常の取引価額相当」で評価する方向が明記された。「評価裁定(時価と通達評価の差)」が取りにくい。つまり、いつ買ったかで逃げにくくなる。適用は2027年1月1日以後の相続・贈与とされている。

駆け込み購入が効きにくく

個人大家にとっての最大のポイントは、従来の定石だった「現金(高評価)→賃貸不動産(通達評価で低評価)+借入(債務控除)」という圧縮効果が、取得(新築)から5年以内では弱まりやすいことだ。相続直前の購入は「通常の取引価額相当」で評価されやすく、節税の主戦場ではなくなる可能性が高い。

評価が市場に近づけば相続税額が増えやすい一方、賃貸不動産は入居状況によっては売りにくく価格交渉も伴うため、その結果として、相続発生時に納税資金不足→換金売りが起きやすくなる点も大家側のリスクとして浮上する。

価格への影響は、立地と物件タイプで異なり、相続圧縮ニーズが強い富裕層が購入しやすい商品(例えばタワマン)ほど需要減の影響が出やすい。

〝5年ルール〟を意識した取得タイミングが重要となる。特に相続対策目的で不動産を使う層は、今後はざっくり5年以上前から保有しておくという時間を味方に付けておく必要が出てくる。

不動産投資家の行動としては、短期で〝相続対策商品〟を回すビジネス(販売側も含む)が難しくなり、長期保有前提の設計にも寄らざるを得ない。

もっとも、今は大綱段階であり、実務上は今後の通達改正・運用で詰めてくることになる。特に重要なのは「一定の貸付不動産」の範囲だ。居住用賃貸、事業用ビル、駐車場、太陽光発電施設などどこまで入れるか。

マーケットへの影響

短期的には2026年中に相続・贈与が見込まれる層の「駆け込み」が起こり得る一方、2027年以降は税目的の購入需要が一段弱まる、という二段階が軸になりそうだ。

ただし前述したようにその影響はエリア・物件タイプで割れ、相続圧縮ニーズが強かった層が好んだ商品ほど需要減の影響を受けやすい一方、賃貸需要が強くキャッシュフローが固い物件は投資需要が残りやすい。結果として「節税で高値を許容していた買い手」が減ると利回りが調整され、価格が上がりにくくなる方向も想定される。

不動産小口化商品は、購入動機が相続評価メリット中心だった層は減る可能性がある。今後は、利回り、換金性、手数料水準、運用・事業者の信用力といった〝商品性そのもの〟が選別軸になりやすい。

相続局面では納税資金の確保が重要になるため、売却・換金の仕組みや価格形成の透明性も、投資家側のチェックポイントとして重みを増しそうだ。

投資家・事業者とも、税効果を前提にした商品設計から利回りや出口、換金性を軸とした設計への転換を迫られる局面に入った。


(出展:2026年1月15日 健美家編集部(協力:若松信利(わかまつのぶとし)))


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