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マンション修繕、借金頼み急増 コスト高で融資400億円

マンション修繕の資金確保は新たな社会課題になっている

マンションの大規模修繕のための積立金が不足し、借金に頼る例が急増している。関連の融資は2025年度、406億円と前年度比58%も増えた。中東情勢の余波もあり、修繕コストはなお高止まりし、融資依存は今後さらに増える懸念がある。積立金を定期的に見直さなければ、財政的に行き詰まるマンションが出てきかねない。

【ポイント】
・修繕積立金不足で融資利用が急増
・修繕費高騰は続く見込みで対応が急務
・修繕周期の見直しなども検討が必要

「ほかに選択肢はなかった」。25年、修繕のため約8000万円を借りた東京都の約50戸のマンション関係者は話す。修繕積立金は約4000万円あったが、外壁で深刻な不具合が見つかり、費用は約1億2000万円に膨張。不具合については施工会社から補償を受け、一部を繰り上げ返済したが、なお数千万円の残債があり、積立金を引き上げて返済中だ。
マンションの大規模修繕で利用する住宅金融支援機構の「マンションすまい・る融資」は25年度、約406億円(受理ベース)と過去最高を更新した。金額は10年前の4倍弱、件数も936(同)と同2.4倍に拡大している。

融資急増の背景にコスト高騰

融資急増の背景にはコスト高騰がある。スマート修繕(東京・新宿)によると、首都圏では2025年までの4年で20%弱上昇した。国の23年度の調査では修繕計画に対して積立金が不足とするマンションは36.6%もあった。その後さらに費用が高騰し、大幅な資金不足に陥った例が多いもようだ。
さくら事務所(東京・渋谷)の土屋輝之マンション管理コンサルタントは「新型コロナウイルス禍がもたらした傷痕も関係しているのでは」と話す。最近は5年程度の周期をメドに積立金を段階的に増額するケースが多いが、「20〜22年ごろは感染拡大の懸念から管理組合活動が停滞し、増額なども先送りされがちだった」。コスト高騰に加えて積立金を低く放置した結果、融資に頼る例が急増したとの見立てだ。
東京カンテイ(東京・品川)によれば、新築マンション(20階未満、建物延べ床面積5000平方メートル未満)の平均修繕積立金(分譲当初の基金も加算した金額)は過去数年、大幅に上昇している一方、国が定める積立金ガイドライン平均額に届いていない。首都圏大規模マンションなどでは同平均額をクリアする物件もあるが、絶対数はまだ必ずしも多くない。
新築価格は高騰し、住宅ローン金利も日銀の利上げを背景に上昇傾向にある。当初の積立金まで高く設定し過ぎると、購入意欲をそぐ懸念もあり、分譲後に段階的に引き上げる方式が主流だ。ただ、実際の引き上げにはその都度、マンションでの決議が必要で、「増額を実現できないマンションも少なくない」(スマート修繕の別所毅謙コンサルタント)。
一方、修繕費の上昇も続く見通しだ。中東情勢悪化の影響で、資材の供給混乱や価格高騰はなお一部で残る。こうした特殊要因が取り除かれても「人手不足といった構造的な要素が大きく、下落する余地はほとんど無いのが実情だ」(別所氏)。
修繕を巡る談合問題も影を落とす。多数の施工会社が独占禁止法違反で公正取引委員会から排除措置命令を出される見通しだ。不適切なマージンなどが上乗せされていれば、修繕費は一段と膨らみ、積立金の不足がさらに深刻になる。ただ、「マージン頼みの会社も多く、一気に正常化が進むかはなお不透明だ」(首都圏のコンサル企業)という声も聞かれる。

修繕先送り、資産価値下落のリスクに

外壁などの修繕を怠ると、剝落などで住人や周辺の通行人にまで被害が及びかねないため、融資を利用してでも必要な修繕は続けなければならない。必要な修繕が先送りされたマンションは中古市場で敬遠され、資産価値が急落する恐れもある。
一方、融資の金利は上昇傾向にある。コンドミニアム・アセットマネジメント(東京・千代田)の渕ノ上弘和氏は「高金利では返済困難で融資を利用できないマンションも増えていく懸念が強い」と話す。万一、必要な修繕ができないマンションが急増すれば「マンションが『スラム化』し、周辺環境にも悪影響を与える恐れがある」(土屋氏)。今後、新たな社会課題として国や自治体も対応を迫られる可能性が高い。
現在は融資を利用していないマンションも警戒は怠れない。実践したいのは積立金の金額のチェック。従来、国のガイドラインは5年程度ごとに修繕計画や積立金を見直すことを提示している。渕ノ上氏は「現在のコスト上昇ペースは速い。5年にこだわらず適宜、管理会社などを通じ、費用の最新事情を収集し、現在の積立金で対応できるかを検証したい」と話す。

修繕内容の縮小も一案

融資を利用する場合も、金額をできるだけ抑えるために修繕内容を部分的に縮小するのも一案だ。管理組合だけでは判断できないので、専門家による調査を行い、節約余地を慎重に探すことになる。
長期的には、「修繕周期をより長くすることも検討したい」(土屋氏)。12年程度の周期を18年程度に延ばすケースが少しずつ増えている。築後60年間で考えると大規模修繕を5回から3回程度とし、数億円単位の修繕費削減が見込める例もある。ただ、周期を延ばすには、専門家の調査を経て、高い耐久性の資材などを使う必要がある。トータルのコストは下がる一方、1回当たり工事費はむしろ上昇するのが普通だ。実現までには時間がかかるので、検討は余裕を持って進めたい。
今後、マンションを購入する人も注意が必要だ。「中古の場合、購入前に修繕履歴や積立金の状況に加え、負債なども確認しておきたい」(渕ノ上氏)。新築なら当初の積立金が国のガイドラインと比べて、どの程度の設定となっているかを調べ、将来増額された場合に、支払いを続けられるかの試算が必要だ。住宅ローン金利なども上昇傾向にあり、積立金増額と重なると、当初想定よりも家計の負担が一気に膨らむ恐れがあることには注意が必要だ。


(出展:2026年7月4日 日経新聞 堀大介)


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